米国の銀行、アジア・ワールド港への免責を要求する

米国財務省は、港への制裁がミャンマーの事実上の禁輸に拍車をかけることになると警告した、2つの米国の協会からの共同書簡を受け取った後、アジア・ワールド・ポートターミナル(AWPT)の使用について検討していると伝えられている。
多くの世界巨大商業銀行により所有されているCleaning House協会とBankers Associate of Finance and Trade(BAFT)は、米国を含めかなりの量の取引がAWPTを通って入港することが分かった後の7月に、米国財務省外国資産管理局(Office of Foreign Assets Control:OFAC)に、文書を送った。
港は米国制裁の対象で、特定国籍業者リスト(Specially Designated National:SDN)にあるアジア・ワールド社の子会社が所有し、運営している。これは米国金融機関と世界中にあるその支店が、OFACにより特別な許可を与えられない限り、同港で取引を行うことができないことを意味する。
AWPTが運営するターミナルや桟橋での米国の取引を認めるための免責の発行を、OFACに検討するよう協会は要求した。
文書では、BAFTメンバーが、アジア・ワールド港のターミナルの名前が取引文書に明記されているのに気づいたが、それは「異常な状態」であると続けている。通常、文書は、個別のターミナルではなく、港町―例えばヤンゴン―を記載する。
BAFTメンバーは、「AWPTに言及している支払いと文書原本を阻止する」という条件を規定しているOFACから非公式のガイダンスを入手した。
協会によると、同港はミャンマーの外国貿易の重大な幹線であるため、問題となっている。ヤンゴンは4つのコンテナターミナルを持つ―アジア・ワールドが最も安く、速く、頻繁に使用されていると、業界は述べている。
香港に拠点を置くHutchison Port Holdingsにより運営されるミャンマー国際ターミナルティラワは同国の最大のターミナルであるが、多くの人にとってAWPTが最適な設備として好まれている。
大型コンテナ船に必要な深水を提供でき、最先端の設備を有し、ヤンゴンへの容易なアクセス、ミャンマーで行われている製造のほとんどが行われている工業団地に隣接していることを、OFACは文書で述べている。
その結果、同港を通る全ての国の貿易の約半数が「米国と他の世界規模の金融機関により融資、促進されている、コンテナ貿易の大半を含むことになる」。
ヤンゴン港を介したミャンマーの輸出入船荷は、2011年から「著しく」増加していると、アジア・ワールドの代表者は述べた。2011年のヤンゴン港の船荷量は383,990TEU(20フィートコンテナ換算)で毎年20%以上増加し、ヤンゴン港を介した総船荷量は2014年で719,567TEUまで上昇したと彼は述べた。
「アジア・ワールド・ポート・ターミナルは2014年に、436,936TEUのコンテナ貨物と一般貨物を取り扱った。これはヤンゴン港の総船荷量の約60%である。アジア・ワールド・ポート・ターミナルの効率性は船産業の中では広く認識されている」。
米国やその他の国からの輸入の大半はアジア・ワールド・ポート・ターミナルを介して行われることを、ヤンゴンの物流管理者とブローカーは述べた。
これは、意図的な制裁違反というよりも、認識不足が原因であると彼らは述べた。ヤンゴンに拠点を置くある物流会社の社長は、アジア・ワールド・ポート・ターミナルを回避するよう顧客からの最初の要求を受けたのは、つい最近のことであると述べた。
しかし、現在OFACは、港の使用について特別ガイダンスを提供しており、米国金融機関と米ドル清算機関はAWPTに関連する取引の阻止を開始すると、OFACへの文書で述べた。「重要な取引はAWPTを介して流れているため、このような行動はビルマとの貿易に悪い影響を与えるだろう」とも述べている。
「さらに、ミャンマーに関連している、米ドルを扱う世界的な米国以外の金融機関も、OFAC規制の世界的影響を考慮すると、同様の措置を実施するかもしれない。比較的短期間では、これらの行動はビルマに事実上の禁輸を引き起こす可能性がある」。
BAFTに対しCleaning House協会は、米国の政権による複数の支援的政策ステートメントを考えると、米国の外交政策目標と最近改正されたミャンマー制裁規制の意図が一致していないことを懸念していると述べた。
ミャンマーと米国の貿易関係は、過去数年間で大きく改善している。米国国勢調査局によると、2010年までミャンマーからの米国への輸入はゼロで、輸出は平均して年間で約1,000万米ドルであった。
多くのミャンマーとの取引規制を米国が解除した時から、双方の取引は急激に上昇した。今年は今のところ、米国からミャンマーへの輸出は1億2,000万米ドルであり、輸入は6,820万米ドルである-昨年全体の輸入の9,270万米ドル、輸出の9,290万米ドルから上昇した。
「この傾向の反転として、ビルマ経済にダメージを与え、米国政府としての政策は変更されたとビルマ政府により解釈されるという意図しない結果を引き起こす可能性がある」と、文書で述べられている。
文書は、アジア・ワールドに所有、運用、管理されているターミナル又は埠頭を通過する積荷に関する貿易取引を認める、制裁規制に基づいた一般ライセンスの発行を検討するようOFACに要求し、「ただし、アジア・ワールドと直接支払いを行わない」としている。
かかるライセンスは、米国の金融機関とその支店に対し、全ての通貨での貿易取引を認め、外国金融機関に対し、米ドルへの貿易取引を認めるべきであると述べた。
Cleaning Houseは、Bank of America, Barclays, BNY Mellon, Citi, Deutsche Bank, HSBC, JP Morgan, Santander とUBSを含む多くのグローバル銀行により所有されている。
米国財務省の報道官はミャンマータイムズに、OFACがAWPTが関わっている取引が米国制裁の対象かどうかコメントすることは出来ないと述べた。
しかし、彼はSDNリストに、Steven Law、アジア・ワールド及びアジア・ワールド・ポート・マネジメントを含む多くの有名なビジネス関係者と彼らのビジネスが含まれていると指摘した。
「米国人は、阻止されている人が利害を持つ財産に関して、間接的または直接的に、取引又は契約することを禁止されている」と彼は述べた。
米国大使館の広報担当官は、依然として、更なる民主化、オープンな社会に向かって進むミャンマーの移行を支援することを約束していると述べた。「これは、開発への支援と人々の生活の質と水準を向上させるために、同国への責任ある投資の奨励を含む」と彼は述べた。
「私たちが外交的関与を含め、これまで発展を促進してきた手段のなかで、金融制裁は依然として残っている」。
(Myanmar Times 2015年 9月11日版 第10面より)