NLDの汚職に対する取り組みは政府サービスに対する「賄賂」を終わらせることができるのか?

ミャンマーの新しい国民民主連盟(NLD)政府は待望の大規模な改革に挑むが、汚職よりも重要かつ扱いづらい課題はない。
数十年に渡る軍事政権下では、汚職が蔓延していた。最も単純な行政サービスにも賄賂が要求されることは一般市民の怒りを買い、さらに、国内でライセンスを取得し、ビジネスを行うには、賄賂が慣習となっていた。前Thein Sein政権中にこの状況に僅かな変化が見られる。
汚職撲滅は民主主義の実践であると共にNLDの典型的な信条である。大統領府大臣であるアウンサンスーチー氏は先日25,000チャット(23米ドル)を超える金額相当の贈り物を受け取ることを公務員に禁止し、ある与党議員はクリーンな政治は党の「活力」であると評価する。
しかし賄賂の根絶は、口で言うことは簡単だが実践は難しい。最近も、いかに薄給の公務員の間にこの問題が深く根付いているか実感した。
先月、私は住人でないことを示す簡易な書類をもらいに、生まれ育ったヤンゴン北オカラッパにある入国管理局に行った。私は市の中心部引っ越したため、新しい住所の登録に同書類を必要としていた。
局内にあるポスターには、必要な書類があれば、1日以内に無料でその書類を発行すると記されていた。
私は窓口担当の中年の女性に、書類と申請用紙を渡した。彼女は崩壊した本の山がある席に座り、私の書類に何度か目を通した。
それから彼女は明らかに落胆した目で私を見た。私はサービスの対価として支払われる少額の賄賂を婉曲的に表現する「お茶代」を書類に挟んでおらず、彼女の表情は(このとき気づいたのだが)暗黙のルールを破ったというサインであった。彼女は角がボロボロになった厚い登録台帳を取り出し、ぶつぶつ言いながら「ここから自分の名前を探して」と投げ出した。
彼女は渋顔で「明後日来て」と言ったので私は抗議した。私はこの決まり文句を良く知っている。「お茶代」なしでは政府職員が求められた手続について、数日とまではいかないが、複雑で遠回りな手続を取り何時間も時間をかけることがある。
私の経験では、1995年に最初の身分証明証を取得するのに200チャット支払い、2012年には更新のためしぶしぶ20,000チャット支払った。私の知るところでは、国立病院では診察のため医師と看護師に賄賂を渡し、学生であれば希望する学校へ入学するために教師に賄賂を渡す。裁判を終わらせたければ警察と裁判官に事件を放棄するよう賄賂を渡すこともありうる。
2015年、ミャンマーは汚職に関する評価において国際透明性ランキングでコンゴ及びチャド共和国と肩を並べ、168か国中147位だった。
しかし反汚職を掲げる新政権になって以来、今度は相手に気を持たせるよう振舞わないと決め、汚職の終わりには国民の行動を必要だと自分に言い聞かせている。
私は入国管理局員に立ち向かい、私が賄賂を渡さなかったため応対を拒否したのか尋ねた。
彼女は尻込みし、承認をおろす担当者がその日はいないと答えた。彼女の後ろで他の職員が私の要求を嘲り、「なら私たちの様に少ない給料で働くことができる人を見つけてくれません?」と言った。
最下層公務員の大半は月100ドルから200ドルという非常に少ない給料で働いており、昨今の家族を養える額より非常に少ない。私は彼らの追加収入を出さないことに申し訳なく感じたが、あらゆる方法で賄賂に抵抗する集団としての責任があるとも思っている。
私は、多くの時間を無駄にすることになるかもしれない、賄賂を渡さないといった理不尽な結果を受け入れた。私はスタッフに次の日来ると告げ、私の申請がまだ拒否されれば労働及び入国管理省に正式に訴えると伝えた。
私が去る際、申請のため暑い建物の中にある木のベンチに座って待っていた3人の高齢女性から拍手をもらい驚いた。1人が笑顔で「素晴らしい!」といってくれた。
私は特に勇敢なことをしたとは思わなかったが、私は翡翠、材木、石油、ガスといった国の豊富な資源から違法に利益をかき集め高所得者に挙げられる上級職員やビジネス関係者を相手に、賄賂と戦うことをいつも考えていた。しかしここでの私は、薄給の公務員を相手にしていた。
次の日、私は妥協しないと気を引き締めて入国管理局を再訪し、驚いた。私は煩わしいことも一切なく直ぐに書類を手にできたのだ。おそらく、国民と市民サービスの間には今、市民サービスの本当の清浄化を求めている新政府が如何に汚職を受けつけないかという意識の高まりが広がっていると考えている。
多くの公務員の間では昇給のためにより多くの取り組みがなされていると期待しよう。そうすれば古い慣習をより簡単に捨てることが出来るのだから。またこれまでの数十年間で国が貧困化する中、堕落し巨万の富を築いてきた上級公務員、軍人、ビジネス関係者の汚職に対する新政府の取り組みを確実なものにしよう。
(Myanmar Times 2016年5月31日版 第7面より)