ティラワホールディングス、事前IPOのリスク対策策定

ミャンマーティラワSEZホールディングス(MTSH)はヤンゴン証券取引所(YSX)への上場が認められ、主要株主、利益、企業が直面する主なリスクといった詳細を開示した。
YSXの2016年5月6日の発表によると、株主9人による共同事業として2013年に設立された同社は5月20日に証券所に上場される。YSX職員によると、MTSH会長Win Aung氏は3月半ばの上場を望んでいたが、承認手続きが遅れ5月になってしまったという。
MTSHの上場価格は金融アドバイザーとCB証券会社によって決定され、上場日の前日に公表される予定だ。別の証券会社職員によると、店頭市場での株式最高値は85,000チャットを付けている。
Win Aung 氏は2月に、株式は60,000チャットから80,000チャットの間で取引されているが、これは実際の株式価値ではなく、供給と需要のバランスによるものだと述べている。
「私たちの評価は公平であり、投資家は苦しむことはない」という。
証券所に最初に上場したFirst Myanmar Investment社は店頭市場取引価格よりも安値で取引が開始された。証券会社職員は、MTSHも同様の道をたどると考えている。
FMIのようにMTSHも株式公開情報を開示した。この法的要件によって投資家が投資を決める際に考慮する収益性とリスクだけでなく企業の株主構成を見ることができる。
公開情報によるとMTSHは、2015年11月時点で16,720人の株主がおり、YSXに390万株式を上場する。FMIが3月に上場した時は、2,340万株式を上場し、既存株主は6,800人以上であった。
また、MTSHの取締役が2015年12月31日時点で全株式の46%を所有している。Win Aung 氏は他の取締役よりも多く同社の220,750株式を所有しており、他の取締役はそれぞれ195,000株から197,000株を所有する。
さらに、2015年11月6日時点で、全16,720株主のうち、大部分(13,565株主)は1株から100株を持つ株主である。上位25株主で同社の株式4分の1以上を所有しており、上位10株主は
同社取締役である。
MTSHはティラワ特別経済特区事業と他のミャンマー不動産企業への投資を目的として設立された。ティラワSEZはヤンゴンに非常に近く、ミャンマーの製造業と輸出業の成長にとって大きな可能性を秘めており、ミャンマーと日本両政府の関与が企業の取引先からの信頼につながっているとMTSHはいう。
同社は前年度の4億6,300万チャットの赤字から、15年度は162億チャットの税を引いた連結売上高において黒字を達成した。
公開情報によると、運営を開始した14年度は、損益計算書に2015年2月にサインしたマーケティング契約による売上を含んでいない。MTSHの事業連結税引利潤は本年度78億チャットとなり、2017年度に73億チャットとなる見込みである。
報告書にはじめに挙げられたリスクは売上の多くを企業の株式や投資に依存していることである。他のリスクとして、仲違いや利益に対する紛争から解消となる恐れがあることから、多くの合弁事業に関与していることがあげられている。投資家はそのためMTSHの投資先の見通しや合弁企業パートナーの動向を考慮する必要がある。
MTSHが大きく依存している2つの投資先は小会社であるティラワ不動産開発社と合弁を組むミャンマー日本ティラワ開発社である。報告書によると、それらはMTSHの“収入の大部分”を担っている。
ミャンマー日本ティラワ開発社(MJTD)はMTSH、ミャンマー国営会社のティラワSEZ管理委員会と日本のコンソーシアムMMSティラワ開発との合弁会社である。MJTDはティラワSEZのゾーンA産業地区の開発、建設、取引、販売、運営を担っている。
MTSHはMJTDの41%を所有し、ミャンマー政府が10%、日本コンソーシアムが残りの49%を所有している。
MTSHの子会社であるティラワ不動産開発(TPD)はMJTDと同様の業務を担っているがゾーンAの住宅及び商業施設の販売等を行う。
326ヘクタールあるゾーンAの土地は投資家に貸し出される予定で、2015年12月31日時点でこのうち76%が貸出済みだとMTSHは述べた。
同社の事業はMJTDから手数料を受け取るだけでなく、TPDとMJTDからの配当に頼っている。これら合弁事業の影響は全てMTSHのキャッシュフローに影響を与えると同社はいう。
MTSHはMJTDと管理サービスを提供する契約を結び、これにより2014-16年は656,000米ドルを受け取り、2016-18年も同額を請求する予定である。MJTDからの管理費は2015-16年のMTSHの収益の21%を占める。
口座預金や投資から得られる典型的な利息収入は49%にも上る。
MTSHはまたゾーンAの土地全てを貸し出すまで延長可能な5年間のマーケティングサービスを提供する契約をMJTDと締結した。この契約による手数料はMTSHの収益全体の“かなりの”割合を占めるという。
しかし全不動産がリースされれば、この契約による収入は低下するとみられる。
MTSHによると、MJTDからの他の収入源である配当も2017年度にはティラワSEZゾーンB事業へ利潤の再投資が始まることから低下すると予想される。この問題への対処として、同社はティラワSEZやミャンマー国内の他の不動産開発事業に投資を振り分ける計画である。
MTSHによると、来年の利益を予測するも、同社は元来ミャンマー不動産市場の動向に影響を受けやすく、産業、住宅、商業不動産の需要や価格変動が全て問題となりうる。
同社はまた、“合理的な”時間枠で利益を見出すことが難しいことから、投資家に対し“短期間の投資には適していない”と警告する。
MTSHの一部の投資家は自身の不動産を所有しているという事実もある。報告書によるとFMIはMTSHの株主でありMJTDやTDPと“競合しうる”不動産開発事業を行っている。
Dagon International においても同様のことが言える。MTSHの会長Win Aung氏がオーナーであるこの企業はヤンゴンでMTSHと競合しうる不動産事業を行っている。
(Myanmar Times 2016年5月10日版 第8面より)